児童の列に車で突っ込む、逮捕の男「指をさされ、腹立った」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080602-00000024-yom-soci

松戸署は車を運転していた同所、水道工事作業員南中剛容疑者(32)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。発表によると、道路は一方通行で、同容疑者はいったん列を通り過ぎたが、数メートルバックしてから前進し、列の最後尾付近に突っ込んだ疑い。

 調べに対し、「指をさされ、笑われたので、ばかにされたと腹が立ち、殺してやろうと思った」などと供述しているという。

このニュースは,ちょっとした切欠で鬱憤が爆発したっていう風にも読めて,そこのところから下の話を連想したんですね。

池波正太郎剣客商売8・狂乱 pp164
醜悪というのではないが,暗く沈みきっていて,そのくせ,胸の内では絶えず,世の中と人びとへの鬱憤がわだかまっており,日常これを懸命に押さえつけている石山甚市の生活が顔貌にも挙動にもあらわれる。それが女たちにとっては,「薄気味が悪い・・・」ことになるのであろう。

この石山という人は,身分が低いのに剣術が強く,そのために上役から疎まれ遠ざけられてきたんですね。それで虐げられ続けた石山は上みたいに全然関係ない女の人達からも蔑まれてずっと孤独を強いられるんですよ。石山は結局問題を起こして職を解雇されてしまうのですが,そのときに受けた同僚の心無い蔑みをきっかけに半狂乱になって,無差別に人に切りかかる暴漢になってしまう。

石山が起こした問題も暴行も弁解の余地がないと思うけれど,そうした問題は理不尽に虐げられることがなかったらおきなかったのかもしれないというのも一方で思います。

もちろん石山とこのニュースになった人とは全然事情が違うのかもしれないけれど,そんなに変わらないのかもしれないじゃないですか。それはわからないのに,問題になったところだけを見てせせら笑うっていうことがあるとすると,そこにはなんとなく腑に落ちないものを感じますよ。

剣客商売 八 狂乱 (新潮文庫)

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